前書き
ここ最近は、登山ネタ、マフちゃんの資産ネタ、ダイエット系のネタ、そして連載小説、時々Web小説紹介としていこうと考えてるよ。
コロナ明けのみんなで行く旅行もあるからネタには尽きないんだけど、何でもかんでもやりすぎると回らなくなってくるんだよね。
第2話 色は匂へど 散りぬるを 我が世誰ぞ 常ならん
「有為の奥山 境越えて 浅き夢見じ 酔ひもせず? ってか」
リリムは目を覚ました。それが何年、何月、何日、何曜日? 地球が何回回った日なのかは分からないが……
近くには朽ち果てたヴァイオリンケース中を開けるともうかつての音はしなさそうなヴァイオリン、自分はワンピースであっただろう洋服らしきもの。
目に見える景色を一言で語るのであればハルマゲドン。
目を瞑る、音も無視する。ゆっくりと、ゆっくり思い出す。
ヴァイオリンの発表会……そうだ。私はそれに向かっていた。 確か春先で、真冬のように冷え込むとニュースを聞いた。 母親はビーフシチューがどうとか言っていたような気がする。で? 今はいつだ?
パニックに陥らないように冷静に判断し、自分の今持っているだけの情報では解読不可能と確信するとリリムは目を開ける。
「一つわかった事は座禅の瞑想修行は思考を整わせるのに意味はあるな」
外部刺激を遮断して思考する事の便利さを理解したリリムは気温は十度前後であるかとボロボロの服を着替える為に家に帰ろうとして……
「戦争の壊れ方でも災害の壊れ方でもない。最高の建築技術が敗れて倒壊してんだ。四、五百年? いや、少なく見積もっても千年くらい経ってね?」
リリムの住んでいた高層マンションは残骸を確認できる程度に風化して跡形も無くなっていた。骨組みであろう鉄骨だったらしき物がちらほら残っているように見える。
「まぁ、プラスチックは案外生きてたりするんだな」
コップやら下敷きなんでものも印字されているものは消えているが当時のままの姿で現存していた。 殆ど半裸みたいな自分だが、着る物より今一番必要な物。
グォオオオオ!
「おー、よしよし。ちょっと静まれよ腹」
空腹である。恥ずかしさは我慢できても人は空腹を我慢はできない。リリムは何か食べる物。できればタンパク源。なんならその辺で飛んでいる虫でもいいと思ったが、気温が低いからか虫一匹見つからない。 昔の記憶を頼りに廃墟を探索する。かつてショッピングモールがあった場所、かつて、商店があった場所。
「おっ? なんだこれ? パウチか?」
商店があった場所に材質は石らしき物でできた何か? 靴入れくらいの大きさの何かの中に銀色のレトルト、パウチを見つける。異様に硬い。触ってみるとコンコンと釘でも打てそうだ。 「100年前のボンカレーは普通に食えたとか言うけど、何これ? 私、保存食を食うギネス記録じゃね?」
ビリビリと破って茶色く、全く食欲を感じさせないそれをサクリとかじってみる。
「かつて、牛丼と呼ばれた君に賛辞を贈ろう」
ちょっと辛いと感じたが、これは紛れもなく牛丼のパウチだった。その全てが解けて混ざり合いペーストの塊となってしまったようだが、各旨味成分は生きているらしく、リリムに文明の記憶を取り戻させる。
「できれば、熱いご飯の上に大量の紅生姜を乗せて食いたかったな」
ゆっくりとペーストを食べ終えるとそれをポイと捨て、続けて食べ物採取を開始する。建物が風化し見知っている景色が大きく変わっても、そこが自分の故郷であった名残を残している事にリリムは心からこう思った。
「美しい物なんだね。文明という物の記憶は」
食べて、寝て、排泄して子孫を増やすという自然のルートから外れた生き物である事を再確認する。 人間は滅んだのかもしれないが、地球に大きな爪痕を残した。他の動物にこんな事ができただろうか? 骨になり、運よく化石になり、その程度だろう。だが、人間は多くの生きた証をのこした。 ざまぁみろ!
「ざまぁみろぉ! そして、私は滅びてもやらなかったからな! 私が滅びてないという事は他にも生きた人間はいる。人間は地球、お前なんかには負けない!」
喚いてみるも何一つ、生き物を感じない。 言の葉を紡ぐ意味すらもない、あるとすれば自分を損なわないようにするくらいか?
「おっ? ここは私の記憶の地図的には……変人の館か」
変人の館、近所付き合いを排除し、大きな洋館に一人で住んでいた中年の男がいた。時折小中学生に石を投げられるような彼は変人と呼ばれ、誰も近づかない。よく大きなトラックがいろんな荷物を運んできていたが、彼は人生のほぼ全てをこの洋館で過ごしていたらしい。
「兵どもの夢の跡ってか? お? 地下室か、石造りだから残ったんかな? よいしょっと!」
がこんと開けてみた地下室。そこには白骨化した人間の残滓とそれを支える石造りの椅子。 リリムは咄嗟に服を破って口を抑える。肺がやられると終わる。かつて変人と言われた男は地下室で最期を終えたのだろう。
「へぇ、変人。お前、すごい奴だったのかもな」
白骨の骨をペシペシ叩きながらリリムはそこにある道具に目を輝かせた。寡黙で後ろ指を指されながらも決して周囲に復讐や報復をするような事がなかった変人、もとい。岩尾秀一という男の生き様を知った。 彼は鞄一つ、自分一つで大いなる旅に出ようとしていた事が見てとれた。その為に必死に夢を追いかけていた為、周りの言葉や視線なんて気にもしなかった。
「が、しかし。神は変人、お前が旅にでる事を許しはしなかったってか?」
大雪、いや氷塊に見舞われる街々、そして世界。地球の怒りの息吹は誰一人として逃すつもりはなかったらしい。 都市機能は失われ、未完成の宇宙ステーションへと逃亡しようとする各国の首脳陣、計画は頓挫し、世界は静かに終わりを告げた。 岩尾秀一は、最後に一言、石のテーブルに“悔しい“と書きその一生を終えたのだろう。 風化せずに残った異様に頑丈なバック、異様に頑丈なジーンズ、そしてタンクトップ、いずれもラミネートされた物で保管されていた。
「変人テメェ、学者だったんか?」
最後に大きなラミネート、それは白衣。そして奥にはブーツも見つかった。それらをリリムは自分のサイズに作り替える事に没頭した。白衣だけはそのままのサイズでマントのように、自分の性癖を惜しみなく楽しめる終わったあとの世界。 秀一が食べられなかった保存食を石のテーブルで開けて味わう。どれだけ前の食べ物なのか検討もつかないが腹痛を起こすこともなかった。 墓荒らしのように使えそうな物を漁っていると……異様に広い石室の一番端でリリムがくる事を待っていたかのようにそれは風化する事のない艶めいた輝きをして現れた。
「おいおいおい! 嘘だろ、変人。お前の旅、私が引き継いだ!」
小さなエンジンを積んだ太陽光発電バイク、錆びていないことから金属でないか、特殊な金属なのだろう。
その手作りバイクにはこう名前が刻まれていた。
”太陽の船”
結び
まだナビは出てこないんだよね。紹介小説バージョンはここで変人さんが、あるWeb小説のことを日記に書いていてそれをリリムが興味を持つんだよね。
リリムが飲酒するシーンがやたら出てくるんだよね。世界が終わった世界なので飲酒運転も平気でしてしまうリリムちゃん。そんなリリムちゃんはたたき台版では、主人公はこんな感じのやんちゃなセシャトさん、たたき台版のラストでは探しても探しても見つからないその物語がWeb小説である事を知ると、古書店『ふしぎのくに』を探しに行くの。もう存在しないはずの『古書店ふしぎのくに』に最後やってくる夢を見るんだよね。そのまま、長い長い夢を見るの。そして、人類の歴史はゆっくりと幕を降ろす感じで物語は終わるんだよね。
今回のブログ版は大幅に修正し、クオンの約束事を書いたへカちゃんとデットストックトラベラーのマフちゃんの意見も参考に、ナナシー事名無しさんの処女作となるんだよね!
次回は第3話、ナビは出てくるのか? お楽しみにね! じゃあまた読みに来てねー!